2016年1月24日日曜日

空虚なことばと緩さなき街 ~武蔵境→ICU→二子玉川~

1月22日。国分寺~三鷹間で、中央特快だとすっ飛ばされる3駅のうち、僕は東小金井が圧倒的に好きなのだが、武蔵境もなかなかに侮れない。当初は昼にラーメンを食べるつもりで、今や武蔵境No.1の呼び声高い「鶉」も視野に入ったが、しかし今日は暖冬そのものなので、味噌という気分でもない。となると、やはり八王子系ラーメンの名店「丸幸」かと思ったが、急にカレーが食べたくなった。




「カフェ サカイ」は駅から少し離れている。こんな店がいつの間にかできていたのか。ランチのスープをクラムチャウダーにしてもらう。美味しい。



まあ、不味いクラムチャウダーは想像しづらい。ここのバターチキンカレーは、なんというか、強いて言えば「デザート」のような感覚だ。「カレーが食べたいのだよ!本物のカレーが!!」とかいう気分の人には向かない。いわゆる「カフェめし」と割り切って気楽に食べるのに適する。








12時台というど真中の時間帯だったこともあってか、やや賑やかであったが、悪い雰囲気ではない。むしろ、良店だと思う。中央線が高架化してしばらく経つが、いつも利用している列車の下にこんな店ができていたとは知らなんだ。他にもいくつか店が並んでいたけど、チェーン店が多くて興味はあまりそそられなかった。

武蔵境と言えばICUの最寄り駅で、彼女もこの店を訪れる機会があるだろうか?学友が私なみに有能で、ちゃんとした店に連れていってあげていれば良いが。

で、そのICUに移動。



今日はICUで想田和弘監督のドキュメンタリー『Peace』を見た。本館という建物で、キャンパスの中でもわりと奥まった所にあった。ので迷った。




大学の構内案内は、基本的には部外者向けに詳しく表示されてあったりはしないものだ。大学時代のクセで、キャンパス内の安い自販機を見るとついお茶を買って教室に持ち込んでしまう。





こちらはほとんど予備知識なしで見て、かつ字幕その他の説明的要素の極力排除された「観察映画」だったが、見応え十分だった。「福祉有償運送」、すなわちお年寄りや障害者の外出を自動車で助ける仕事を映した作品だった。

障害者の外出支援、という珍しい仕事について、僕は実は予備知識があった。府中市美好町の「珈琲焙煎舎」で買えるプライベートプレス『アフリカ』の編集人である下窪俊哉さんがそれを仕事のうちの1つにしているからだ。

が、この映画が外出支援を映したものとは知らなかった。そして、ああ、外出支援とはこういう仕事なのかと、文字通りの映像的リアリティを得た。

有償と言っても、そのほとんどはガソリン代や自動車の維持費に消えてしまい、運転する方に給料は出ない。同業者の講習会で、主人公の1人である想田さんの義理のお父さんが、お金では得られない物がある、と仰っていた。誰もが言いそうな台詞だが、込められた深すぎる意味を、見る側は突きつけられる。

こういう人々の善意を踏みしだいて、この国の社会保障は成り立っている。カーラジオから流れ出す、当時の鳩山首相の社会保障と経済成長についての国会での冗長なスピーチは、先のお父さんの一言の無限の含蓄に比して、余りに空虚だ。でも、それを僕は嘲笑したり批難したりすることは単純にはできない。なぜなら、鳩山の言葉と僕の言葉は同じ軽さだからだ。

社会保障についてのリアリティは、僕にはなかったんだなと思い知らされた。

その他、社会保障給付にまつわる煩雑な手続きぶりや、岡山の地方都市に暮らす、つまりは我々の身近にもいらっしゃるであろうお年寄りや障害者の倹しい生活ぶり、また、お父さんに養われている猫たちの社会も、とても印象的だった。あの猫たちの社会のあの有り様こそ、つまり、多様な者たちのごく自然な紆余曲折含みの共生こそ、人の世の理想かもしれない。

上映後、想田さんのトークがあったのだが、僕は次の二子玉川でのイベントの参加証を家に忘れて来てしまったので、取りに帰らねばならず、聞くことができなくなってしまった。




一旦家に戻り、二子玉川へ。

二子玉川では、朝日新聞社主催の、鷲田清一と高橋源一郎のトークイベント「『折々のことば』の作り方」を聴いた。こちらもたいへん興味深い内容だった。

特に、鷲田さんが「哲学書は2割理解できれば十分。名だたる哲学者たちも、彼ら自身は先行の哲学書を誤読しまくっている」「読む前と読んだ後で、自分に『ズレ』が生じるようなことばが意味のあることば」と言っていたのと、高橋さんが、「『社会のことば』は皆の目につくところにはない。だから『論壇時評』(彼は『朝日新聞』でこのコラムを2011年以降担当しているが)を書くためには、それを探す作業が必要」「自分のことをことばにできる。ちょっとしたことばの中にその人自身が立ち現れる。それが感動を呼ぶ」と言っていたことなどが印象に残った。






ニコタマ、7、8年ぶりだろうか。さらに人工的な街になった。この街では玉川高島屋はもはや大ベテランだな。南館のインフォメーションカウンターに渋いおじさまが立っていたのが好印象だった。この街の変貌と対峙している感じだった。

前来たときは有名な「鮎ラーメン」を食べたけど、今日は「みちしるべ」とかいう店でつけめん。まあ、そこそこ。卵かけご飯は美味しかった。




人工的な街は、場合によっては好きなんだけど、ニコタマはちょっと整いすぎている感じで、僕の好みからはずれますね。


東急はこんなフリーマガジンを出しているのか。さすがですね。さっきニコタマにちょっと苦言を呈したけど、僕は田園都市線沿線は基本的には好きですよ。

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